ハコガメの飼育方法について解説です。
ハコガメ飼育の基本
君たちはこれからハコガメを飼育するわけだが、いろいろな飼育方法がありどんな環境で飼育するのが良いのか迷ってしまうのがハコガメ飼育です。ベビーサイズから育てるに当たり、まずは各飼育環境のメリットとデメリットを説明します。最初は飼育者が飼育にかけられる労力や手間を考えて自分に合った飼育方法でやってみるといいと思います。カメが成長してきたら「ハコガメ君に聞く」飼育方法を試してみましょう。
浅い水深で飼育(ほぼミズガメのような飼い方)
〇-メリット △-デメリット
〇水替えをするだけなので掃除が楽。〇虫などがわきにくい。△甲羅の成長がいびつになりやすくなる、△土などに潜れる環境ではないため、ストレスになりやすい。△与えらえるエサが限られる。△つまらない。△単独飼育の場合溺れる危険性がある。△皮膚病になりやすい。
よく見るベアタンクに浅く水を張っただけの飼い方。飼育者が楽(らく)をすることを追求した飼育方法。この飼い方はつまんねーし、ハコガメへの愛を感じられないな。
ミズゴケ主体で飼育
〇ミズゴケの湿り具合で湿度調整が楽。〇ミズゴケに潜れるためカメもストレスになりにくい。甲羅が保湿され安く安定して育ちやすい。△ミズゴケの交換頻度が多くコスパが悪い、△殺風景になりやすい。△エサやりをしにくい。
落ち葉とかを入れてレイアウトするといいかも。広めのケージなら一画を水苔エリアとするのもいいかもな。
陸地+水パッド
〇カメが好きな環境を選べるので非常に良い。〇水場でエサやり、陸場でリクガメのようにお皿に盛ってエサやり両方できるのでエサのバリエーションや調合がいろいろできる。〇床材にカメが潜ることができるのでストレスを緩和できる。△慣れるまでカメはあまり出てこなかったりする。△水場の交換と床材の掃除、2つのメンテナンスが必要。△メンテを怠ると虫がわきやすい。
カメが水パッドの下に潜り込んだりすると水が溢れてぐちゃぐちゃになってムカつくんだよな。だからオレは潜り込めないように水場をオリジナルに改造してる。
どの飼育環境でも使う器具は同じ。
飼育の元となるケージ/水槽は違ってきますが、保温器具や照明器具はどれもほぼ一緒です。爬虫類紫外線灯で照明(リクガメと同じようなメタハラ+全体照明を推奨)、冬にはスポットライトと暖突を設置、1年を通して底面ヒーターを飼育面積の1/3くらい敷いた環境です。水場メインの環境の場合でも水深が浅いため水中ヒーターはまず使えないと思ってください。空気を温め、その流れで水場も暖かくなるようにしましょう。リクガメの飼育方法での保温を参考にしよう。
ベアタンクなんかで飼育する必要あります?
ベアタンク(プラケースや水槽に浅く水を張っただけの飼育方法)は三流だ。飼育者が楽をすることしか考えていない。それでハコガメを飼育した気になってるとしたらもったいない。ハコガメの生き方について何も見えてこないだろう。いろいろな飼育方法を試して結局ベアタンクになるのならその人の性格とやり方なんだろうが、買う時にこうやって置かれてあったからそれをまねして…なんて言うのは論外もいいところだ。カメに謝れ。
ベアタンクやプラケースに水を張った「よく見る」飼育方法を論破する形になりますが私の考えはこうです。水場があるメリットを考えてみよう。水場のメリットとはなんでしょうか?配合飼料や赤虫などを与えやすい、水温は安定しやすく保温面で有効に作用するなどでしょうか。ハコガメ用の水深というのが問題で甲高の半分くらいの深さがで飼育されていることが多いです。つまり非常に浅いんですね。これ単独飼育の場合は結構危険でひっくり返ると起き上がれないんです。甲長と同じくらいの水深ならカメは水中でひっくり返っても簡単に起き上がれます(十分な浮力が働くため)。しかし、ハコガメ用の水深と言うのは浅いんです。何個体も同じ水槽にいれば他の個体と接触したりなんかで起き上がれるんですが、単独飼育だと体にぶつかるものがない、で溺れちゃんですね。水深5㎜くらいならひっくり返っても顎を下げて(上下が逆だから顎を下げるという表現になります)水面から鼻を出して呼吸できるんですが、微妙な水深によっては息継ぎできないこともあります。イベントなどで何匹もベアタンクに入れられている環境を鵜呑みにして同じように飼育すると事故ります。個人がハコガメ1個体を水槽で飼育するというのはショップなどの多当飼育とは異なります。浅い水深でも条件が揃ってしまうと溺れてしまうと頭に入れておきましょう。
成長の部分でもデメリットはあります。甲羅に満遍なく水がかかっていないと甲羅が均等に美しく育ちません。水に浸かっている縁甲板の部分だけ成長が早くなり、不格好な個体に成長している個体を多く目にします。私は床材をメインにベビーから飼育しておりこのように育ったことが1度もないのでこの縁甲板急成長/他の甲羅は成長が寸詰まりという症状は浅い水深で飼育している個体に見られるものだと思います(もちろん遺伝的な素質や動き回る個体で絶えず甲羅全体が濡れていてバランスよく育つ個体もいます)。アメリカハコガメやセマルハコガメは大きくなればほぼ完全な陸上生活になります。それならば小さい時から陸上生活させておいてもいいのではないか、というのが私の考えです。しかしながらエサの問題がありますね。ショップでプラケース水張りで飼育されている個体は陸地でエサを採ることを知りません。エサを水面に浮かせないと食べない個体が大半ですので、これを陸地でも給餌できるように慣らしていく必要があります。以下を参考にしてみてください。
ハコガメを浅い水深の水槽で飼育、エサを投げ入れれば食べる→陸地(床材)+水パッドの環境に変えて、水パッド内にエサを入れて食べるように慣れさせてあげましょう。それができたら水パッドを完全に取り除いてより小さなエサ皿に水を浅く張ってエサを浮かせてあげましょう。それで食べるようなら湿らせた配合やピンクマウスなどを刻んでエサ皿においてあげれば食べるように仕上がっているはずです(1ヶ月くらいかけて徐々に変えていきます)。水場を撤去しても、きちっと床材を湿らせて保湿をしてあげれば甲羅が綺麗に育っていきます。力土セットを敷き詰めた環境の一部分にミズゴケをこんもり盛って特に湿り気が強いエリアなんかを作っても面白いと思います。ハコガメ君はしっかりと潜ってくれますよ。陸地飼育のメリットはエサをいろいろ混ぜて与えることができる点と水替えがない分掃除が楽なことにあります。お皿にエサを盛り付けて与えて食べた後を数時間後に撤去、代わりに水皿を入れておいてあげるだけ。ベアタンク飼育でひっくり返って溺れていないか毎日心配するより、甲羅の成長がいびつになるより、水質悪化やストレスでカメが皮膚病になるより、床材メインで飼育したほうが賢いですし、カメのためだと思います。
うちでは最初、床材の環境にベビーを入れてお皿にエサをおいて与えてみる。食べるならそのまま床材環境だ。散水は毎日するが、水入れは日替わりで置いておく程度だ。お皿から食べないやつは床材7割水場3割で仕切った環境で飼育する。水場でエサを与えて徐々に陸地で食べるように慣れさせる。陸地で食べるようになったら水場は撤去だ。水替えがめんどくさいしカメが溺れるかもしれねえからな。マイナス因子は取り除くのだ。
ハコガメが小さいうちはカメに聞けってことだ。同じ種類でも水場が好きな奴、水場でしかエサを食べようとしない奴とか普通にいる。逆に陸地が好きで水に入るとすぐに出ようとする個体もいる。ただ、最終的には陸地で生活するカメになるんだ。成長して広い湖のど真ん中で泳いで暮らすとか海に出るとかそんなチャレンジャーなハコガメはいない。オレは見たことがない。マコード、ミスジハコ、シェンシー、コガネ、チョーイ、マレー、ヌマハコを除き「将来は完全な陸上生活」というのを念頭に置いてベビーから育てるといいぞ。
多くのハコガメは最終的には上のようなテラリウムでの飼育となります。全身が浸かるような水場は撤去したほうがと良いです。水場があってもぐちゃぐちゃにして交換が大変になるだけです(飲み水は定期的に与えます)。ある程度大きく成長したらミズゴケなどもいりません。ベビーから成長期の甲羅の成長が著しい時期に甲羅の保湿には気を使ってあげましょう。成体になったら屋外にビオトープなどを作ってその周りは陸地(土や芝生なんでもOK)、柵をして飼育するのも良いです。
エサ Meals
配合飼料を中心に昆虫、ピンクマウス、ミミズ、乾燥エビ、成長した個体にはひなウズラ、果物なども与えましょう。肉食傾向が強い雑食性だと考えていただければ問題ありません。リクガメと違う点は配合飼料を中心にエサを与えてOKだと言うことです。総合的な栄養ではハコガメにとって配合飼料は非常に良いエサです。ただし、柔らかくして与えることが多いので、ピンクマウスやウズラ、昆虫などを、顎の力を使って食べるエサも与えていきましょう。また、単一のエサの給餌は避けていろいろなものを幅広く与えることも大切かと思います。時折、果物なども与えましょう。エサを食べないアダルトには半殺しにしたミミズがお勧めです。エサを食べないベビーにはテールマゴットがお勧めです。自分の経験上、テールマゴットを食べないベビーはいませんでした。テールマゴットとはオナガウジの事でハコガメのベビーが食べるにはちょうど良いサイズ、水に入れるとその場で動きまわりますが、移動する速度はめちゃくちゃ遅いので一定の場所にとどまってウニウニ動いています。これがハコガメベビー君の興味を煽り、食欲をそそるようです。キボシイシガメベビーやその他あらゆるミズガメやサラマンダーなどの餌付けにも使えます。テールマゴットに餌付いたら配合に移行しやすくなります(同じように水に浮くため)。かめぢからでは1年を通してテールマゴット(オナガウジ)を培養して切り札のエサとして使っています。
基本的には陸上(テラリウム)メインで生活させ、エサ皿に置きエサをして食べるようにするのが良いです。理由は様々な配合飼料やサプリメント、栄養剤、カルシウム剤を混ぜて与えることができるからです。水中での給餌だとこれができません(ぐちゃぐちゃに分離してしまう)。かめぢからでは1回のエサにこれだけの素材を混ぜてます(下記画像参照)。与えている量は適量という感じですが詰まっている栄養バランスは最高のものとなります。
ハコガメいろいろ
アメリカハコガメの仲間
いきなりだがハッチサイズから育てるのは簡単ではありません。初心者はある程度育っている個体を購入しましょう。全体的に憶病で神経質な個体が多く、最初は餌を食べません。人が見ているとなかなか食べないので給餌中は覗かない、ほおっておくなど必要です。成長に従い慣れてくるものが多く、餌の時間になると寄ってくるようにもなります。とにかくベビーは神経質な個体が多いというのを頭に入れておきましょう。甲羅が高いのでひっくり返ると起き上がるのが大変な種類です。ベビーのうちは単独飼育での溺死には注意しましょう。北米原産の種類が多いため、成長すれば屋外飼育~冬眠もできます。
セマルハコガメ
アメリカハコガメよりは神経質ではなくより飼育しやすいです。気温や環境が整っていればどんなエサにも餌付きやすいです。ハコガメ飼育とはなんであるかを教えてくれるお手本のようなカメ。最高!沖縄で密猟された個体がチュウゴクセマルとして流通することがあり悲しいです。昔はアダルトで琉球個体が多かったですが、最近はベビーでもCBじゃなくて沖縄から捕まえて売ってたりするから恐ろしいですね。過去に一度でも密輸で逮捕されたショップや業者とはお付き合いしないことです。そういう所は明るみになっていないだけで今現在も密輸したり違法個体捌いたりしています。逮捕されて反省する人は最初から密輸や書類偽造輸入とかしません。犯罪者って一生犯罪し続ける遺伝子を持ち合わせている方々です。
ヒラセガメ、スペングラーヤマガメ、モエギハコガメ
ベビーの頃からかなり陸生傾向が強いので初っ端からリクガメの飼育をベースにしましょう。CBであればどれも飼育は難しくないと思います。WC個体は当たりハズレがあるという点、また自然保護の観点からご購入はお勧めしません。カメが可哀そうなのでやめておきましょう。ヒラセとスペングラーは眼で見てエサを認知します。故に動く昆虫などへの反応が非常に良いです。モエギは眼と嗅覚も使ってエサを認知します。故にこの中では果物や配合飼料に餌付きやすい部類と言えるでしょう。涼しい環境が良いと言われますが暖かくても風通しが良ければ大丈夫です。
モリイシガメ、アメリカヤマガメなど
ベビーの内は水棲傾向が強く成長に従い陸地が生活圏なるタイプです。アメハコほど神経質ではなく、基本的には丈夫な種類が多いのでエサの取り方によって環境を変えていけば良いと思います。
マコードハコガメ、ミスジハコガメ、シェンシーハコガメなど
生涯を通して半水棲のグループです。浅い水深に住むヌマガメのように飼育すると良いでしょう。冬眠などもクサガメやニオイガメと同じく水中でします(野生では岸辺の泥や木の根元などで冬眠するのでしょうが、飼育下では首を伸ばして息継ぎができるくらいの水深で雨雪がかからないようにすればOKです)。高価な種類が多いですが丈夫で飼育は難しくない種類がほとんどです。
まだまだ発展途上のハコガメ飼育方法だ。ハコガメは種類が豊富であり、ミナミニシキハコガメのようにかなり乾燥した環境に生息する種類もある。個々の種類に応じてより適した飼育方法を研究していくべきだろう。当HPではハコガメとヤマガメを同じカテゴリーにしているが、半水棲/陸生種のミズガメとして考えると、ここに挙げた以外にもまだまだいます。南米に生息するヤマガメなどは今後より詳細な飼育方法や繁殖方法が確立されていくグループではないだろうか。
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