ヘビの飼育方法

ヘビの飼育方法

2023年1月9日

ヘビの飼育方法について解説です。

ヘビ飼育の基本

君たちはこれからヘビを飼育するわけですが、まずほとんどの種類に当てはまる飼育の基本を頭に入れておきましょう。ヘビ君が快適に過ごせるようにするための優先事項です。飼育とストック(虐待)は違います。かめぢからは多くの方に生き物の「飼育」を楽しんでいただきたいと思っています。

気温

ヘビが生命活動をするために大事なファクターです。

水場

ヘビが給水したり皮膚の殺菌や脱皮をする上で重要です。

スペース

ヘビの飼育を最大限に楽しむため広さはあったほうがいいです。

ヘビは照明なしで飼育できる。違うんですよね。

床材

床材はちゃんと敷いた方が良いです。ヘビが何を考えているかわかりやすくなります。

エサ

ヘビの成長に欠かせません。拒食を防ぎ効率良い給仕を心がけましょう。

気温 Temperature

大体26度から28度くらいが良いです。30度くらいあってやや暖かくても風通しが良ければOKですし、24度くらいでもケージの一部分に暖かめの場所があれば平気です。ヘビは爬虫類、爬虫類は変温動物なので気温が低いと動きが鈍ります。食欲も悪くなりますし代謝も落ちます。また、熱すぎると熱中症となり死んでしまいます。夏場はケージのみならずお部屋の風通しを良くし、空気の入れ替えを頻繁に行いましょう。冬場はしっかりと保温です。爬虫類用の保温器具としては照明類、スポットライト、底面ヒーター、暖突など、一般的な保温としてはエアコンや赤外線ヒーターでお部屋を暖めるなどです。後述する光関係になりますが、照明器具は熱を持つため冬場の昼間の保温としても効果があります。

水場 WaterPlace

どんなヘビにも水場は必ず入れてください。ヘビは脱皮をします。脱皮はヘビにとって成長の総決算と言うべき大仕事です。できるだけスムーズに短期間で剥がれ残しがないように完了したいです。そのために水場(全身が浸かる水バッド)は重要です。頭の良いヘビは脱皮の前になると頻繁に水場に出入りします。水に皮膚を通することにより古い表皮が浮き上がりやすくなり脱皮がスムーズに行えます。脱皮がうまく行かないと瘡蓋のように古い表皮が残ってしまい良くありません。非常にまずいです。水パッドから水を飲むヘビも非常に多くいます。常に新鮮な水をパッドに入れておくように心がけましょう。霧吹きを行ったりして脱皮を促進する方法もあるのですが、私はお勧めしません。ダニが沸くからです。ヘビにはヘビダニという特有のダニが付きます。特にジメジメした環境ですとダニがわきやすくなるので私はヘビの飼育は乾燥気味と基本としています。熱帯雨林に生息する種類でも床材は乾燥気味です。その代わり水パッドは必ず設置します。霧吹きをした後はエサ食いがあがったり活発に動き始める(餌を探し求める)個体が多いも事実です。霧吹きをする場合は日中に水分が完全に蒸発する量にしましょう。つまりは午前中からお昼ごろにシャワーし、昼間の照明などの熱ですべてが夕方には蒸発し、霧吹き前と同じ状態に戻るようにすると良いです。脱皮前は霧吹きもするとよりスムーズに剥がれますのでタイミングを考えて水を撒いてやると良いです。ヘビダニはジメジメした環境を好みますが、ヘビが水に浸かることを嫌います。ダニが付いたヘビを水パッドに入れると皮膚表面にいる弱いダニは溺れます。ヘビダニの予防という面でも水パッドは必ず入れましょう。乾燥気味の床材と水パッドで脱皮とダニ対策はバッチリです。

水パッドに入れる水は水道水で良いのか?という問題ですが、私は水道水をそのまま使うことが多いです。もちろん水棲傾向が強い種類などにはカルキ抜き水を使いますが、脱皮の時以外はほとんど水に入らないような種類には水道水です。理由は日本の水道水には塩素などが入っており、消毒の効果を持つからです。皆さん、日本にお住まいなので全く実感がないと思いますが、手を切った時、転んで足を怪我した時、まずは水道水で血を洗うでしょ?これすごく効果的です。その傷がほとんど化膿しないで治ったり、腐ったり傷口が広がったりしないのは怪我してすぐに水道水で傷口を洗うという日本文化のおかげです。アフリカで手を擦りむいて水で洗ってみてください。だいたい翌日には化膿して傷口が広がります。それくらい日本の水というのは安全で消毒効果を持っています。カルキ抜きをしないと熱帯魚やミズガメなどの肌荒れの原因にもなる水道水ですが、一時的に浸かるくらいであれば殺菌効果を含めてちょうど良いというのが私の考えです。

脱皮前ではないのにかなり頻繁に水パッドにヘビが入っている場合(水を特に好む種類以外、例えばキングスネーク、コーンスネーク、ナメラなど)。気温が暑い場合が多いです。ヘビにとって暑い環境だと水に浸かっていることが多くなります。飼育環境の気温を見直してみてください。水パッドに入りっぱなしが悪いわけではないですが、気温が高すぎるとヘビは快適ではありません。またヘビダニ(Ophionyssus natricis)が付いている可能性もあります。水バッドに黒いゴマのようなものが浮いていたらそれはダニです。ヘビの顔の周り、鱗などを良く確認してみましょう。ダニついては説明が長くなるのでまた今度。ダニを湧かせないコツはとにかく風通しを良くすることです。このように水パッドを置くだけで様々な「恩恵」をヘビにもたらし、「気付き」を飼育者に与えます。水替えがめんどくさいという人もいますが、ぴっかぴっかな水場を置いてあげることでレイアウトが冴えわたります。水パッドはヘビが倒さないような重いものが良いです。かめぢからでは水槽をそのまま仕切った不動の水場か、ガラス製で重くひっくり返らない水入れを設置しています。

スペース Space

狭いケースに入れて管理している方が多いですが、それではヘビの飼育を最大限に楽しめません。できるだけ広い環境を用意してあげましょう。全長1mのヘビには幅1m奥行50㎝高さ60㎝くらいはあるケージが理想です。木に登ってとぐろを巻いていたり、シェルターから顔をのぞかせていたり、日光浴をしたり、水パッドに浸かっていたりと様々なヘビの行動を観察することができます。こういったシーンを見ることにより飼育者も飼育のモチベーションが沸き、もっとヘビを好きになれるのではないでしょうか。地中性の種類を除きほとんどのヘビには登り木などを入れてあげましょう。故にケージに高さがあったほうが良いです。当店ではどんなヘビのケージも下層と上層がある2階建て仕様で登り木を通してあります。登り木はヘビの運動はもちろん、脱皮の際に体をひっかけて綺麗に皮を脱ぐのにも役立ちます。ケージの中には電気器具類は入れないようにします。照明、保温などはすべてケージの外側から行います。夜にヘビが照明器具の隙間などに潜りこみ、朝ライトが点いた際に火傷をしてしまうなど事故があります。

光 Lighting

ヘビに照明は必要です。夜と昼の明確な違いを照明によって感じさせる(代謝促進、場合によっては繁殖促進)、紫外線に含まれるUVAなどは脱皮の手助けになる、野生のヘビが岩の上などでとぐろを巻いて日光浴をすることからも光は必要です。かめぢからではメタハラを当てている場合が多いです。ヘビのケージ1つにメタハラを使っているわけではなく、天井から2mくらいの照射距離にて4個くらいのケージに光が当たるようにしています。LEDや反射板を利用した紫外線灯などと併用しかなり強い光を遠めの距離からヘビケージには当てるようにしています。強い光と言ってもヘビの場合、脱走防止の金網などでケージの中に降り注ぐ光は遮られますのでリクガメなどよりも暗いとは思います。ヘビが日光浴をしたければ上に登れてくつろげて、光が嫌なら下層の日陰でじっとしているなどケージの構造とライティングをうまく利用して飼育しています。

床材 Soil

当店はヘビの飼育環境にも必ず力土を敷き詰めています。床材を使う利点は消臭効果が高い、湿度管理が自由自在、ヘビが潜れてストレス緩和、何よりヘビが自然の床材を好み、見栄えも良いからです。ヘビだけではなくリクガメやトカゲのケージにも言えますが、木製ケージと床材の併用で消臭効果が絶大で爬虫類ショップなのに爬虫類の匂いがしないお店と皆様驚かれます。逆に私は臭くて不潔なお店には嫌悪感全開なのでこの部分は譲れません。故に床材は必須です。導入したばかりで慣れていないヘビは床材に潜ります。床材から出てきて地表でとぐろを巻いていたらエサやりのチャンスです。エサを呑んだ後ヘビはどうすると思いますか?お腹がいっぱいになったヘビはまた床材に潜ります。ヘビが神経質なうち、慣れていないときはこれでエサを与えるタイミングが読めるのです。力土の場合、糞などもヤシガラに包まって乾燥するのでピンセットで掃除すれば良いです。

エサ Meals

多くのヘビはピンクマウス~マウスに餌付かせると良いでしょう。時折ヒヨコなども与えると良いです。種類によっては特殊な食性であったりもしますので飼育する前にしっかりと調べましょう。ピンセットからエサをすぐに取るような個体であれば良いですが、反応が悪かったり怖がったりする個体には置きエサをします。エサは自然解凍がお勧めです。以下当店やり方です。マウスを5匹くらいエサ皿に乗せて自然解凍。蛍光灯台の上にのせて熱で解凍したり、メタハラ安定機の置き場所(ここも暖かい)に置くなどして解凍します。マウスが解凍され程よい温かさになったら慣れている個体からそのままマウスをピンセットで与えていきます。慣れていない個体には温めるのに使ったお皿ごとマウスを乗せて置いておきます。お皿には5匹分のマウスの匂いが付いており、神経質な個体や餌付ききっていない個体に対して絶大なマウスの匂いによって食欲を促します。解凍するのに使ったお皿をすぐに洗ってしまうなどというもったいないことはしないようにしましょう。このお皿はヘビの反応をよくするために利用できます(お皿は匂いが付きやすいプラスチックが良いです)。ヘビがシェルターや床材から出てきて木の上でくつろいでいたり、流木の上でとぐろを巻いている時は大体エサを食べます。慣れていなくて隠れ家から出てこない種類でも夜に観察してみると出てきていたりするのでそのタイミングでエサを与えてみましょう。カメ類、トカゲ類などと違いヘビは夜にエサを求めて行動を起こすことが多いです。立ち上げる際はこのようなタイミングも逃さないようにしましょう。また夜の保温もある程度はしっかり行いましょう。

ヘビいろいろ

コーンスネーク、マウンテンキングスネーク

親しみやすい安価なモルフから高価なモルフまでバリエーション豊か。流通するサイズのベビーはやや細めで小さめなので弱々しさはあります。初心者はできればピンクマウスMサイズを呑めるくらいに育った個体を購入するのが良いです。ベビーは動きがかなり素早いのでハンドリングなどは控えてください。70㎝くらいになれば素早しっこい動きはしなくなるので持ちやすいです。噛んでくることはほとんどなく温和です。

キングスネーク

コーンよりも大きなベビーサイズでハッチサイズからでも飼育しやすいです。アグレッシブさもあり拒食することはほとんどありません。最も飼育しやすい部類のヘビです。噛んでくる個体が結構います。ベビーは素早いのでハンドリングするなら60㎝を超えたくらいからです。

ミルクスネーク、アオダイショウ

コーンとキングスネークの中間くらいの性格と飼いやすさ。

ナミヘビ全般

コーンスネークをベビーから育て上げることができればほとんどのナミヘビを飼育する技術はあると思って良いと思います。ベニナメラなどのハッチも飼育はコーンベビーと大して変わりません。コーンは初心者向けと言われますが値段が安価な物が多いだけでヘビ自体は弱々しい面があります。どの種にも言える事ですが大きな個体の方が丈夫で飼育を始めやすいです。ヘビはサイズが小さいほど難易度が上がると思ってください。カサントウ、ナンダ、インディゴヘビなどは体の可動域が柔らかくありません。これらの種類はより広いスペースが必要です。ナミヘビの中には体が硬い種類もいるのでヘビの体質を見極め、窮屈にならない飼育を心がけましょう。

ボア、パイソン

ナミヘビよりも太い体形ですが、体が柔らかくとぐろを巻くとかなり小さくなるので狭い環境でも飼育されます。しかし、本来の動きを見るには高さもあって幅もあるようなケージが望ましいです。頭が大きく噛まれるとかなり痛いです。力がありますが動きが遅いのでケージのメンテナンス中に脱走するなどほぼなくて管理しやすいです。エサもピンクマウスSサイズを余裕で呑める大きさで生まれてくる種類ばかりなのでベビーであっても餌付けは難しくありません(WCのボールは拒食する個体が多いです)。ハンドリングできる個体もいれば噛んでくる個体もいます。ナミヘビよりもボリュームがあるのでエサは大きくなります。糞なども大きいのでしっかりと取り除いていきましょう。

スナボアなどの潜り系

ヤモリや両生類などを食べる種類が多い、またベビーは頭が小さくピンクマウスSを呑むのも一苦労な個体がいます。つまり初期の餌付けはかなり難しいです。サイズによってはコーンよりも難しいのでしっかりと環境とエサに慣れている個体を入手すると良いです。代謝が緩やかな物が多く一ヶ月くらいエサを食べなくても平気だったりします。まずは環境に慣らして落ち着かせる、霧吹きをすると雫を飲む個体が多いので水パッドとは別に霧吹きもしてあげましょう。床材に潜っていることがほとんどですが地上に出てきている時(主に夜)はエサを欲している時が多く、このタイミングでそっとエサを置いてあげると食べてることが多いです。この方法でたくさんの個体を餌付かせてきました。

ヤスリヘビ、ミズヘビなど

熱帯魚と同じように飼育します。カルキ抜きをした水を使用し水温は26度くらい脱走防止のために必ず網蓋をしてください。やけど防止のため水中ヒーターは使わず外部からの保温が良いです。エサは小魚がメインとなります。通常のヘビと違い一度の給仕で3~4匹金魚などを与えると良いでしょう。珍しい種類は水質にうるさかったり、汽水域に生息している物もいます。また、流通する個体の多くがWCなので生息環境に近い水質を気にしてあげましょう。